今回はポリフェノールの代表格、タンニンとフラボノイドについて解説していきます。
目次
タンニン
ポリフェノール類に属する化合物のグループで、植物の様々な部位に存在します。タンニンは口に含むと渋味があり収斂性、つまり収縮させる作用があるのです。この作用を利用して、動物などの革をなめすことができ、なめし革の生産に繋がりました。
また、この働きが樹皮や木の中心を守る防御機能として担っています。
タンニンの語源は革をなめすというラテン語が由来です。
タンニンの働き
タンパク質と強力に結びつく特徴があり、この結合はほかの酵素の働きを抑制します。
食べ合わせで、「しじみとお茶は一緒に摂ってはならない」というのは、しじみに含まれている鉄分と、お茶に含まれているカテキンが結びつき、体内に吸収されにくくなってしまうからです。
タンニンの分類
タンニン類の属するほぼ全ては、加水分解タンニンと縮合型タンニンに分けられます。
加水分解タンニン
フェノール酸がエステル化(酸とアルコールが反応してエステルに変化すること)によって没食子酸となって、糖と結合したタンニンのことです。これらは加水分解されると没食子酸とグルコースに分解されます。
加水分解タンニンの作用
- 炎症を起こした粘膜への保護作用
- 粘膜の過剰分泌を抑制し、乾燥を防ぐ
- 感染による炎症や腫れの抑制
- 小さな傷口の止血作用
- 月経過多や子宮からの出血の抑制作用
- 下痢を止める作用
- 外用で、膣洗浄や目の洗浄に用いることが可能。
縮合型タンニン
一般的にカテキンやアントシアニンと呼ばれるタンニン類で、加水分解される時に一部はアルコールや水に溶けますが、あまり溶けません。しかし、グリセリンを加えることで、溶解性が高まります。
オリゴマープロトシアニジン(OPCs)
2つのカテキンが炭素結合によって結びついた縮合型タンニンの大きなグループです。
緑茶や赤ワインに含まれ、赤ワインを日常的に飲んでいる人は、心血管及び脳血管疾患の死亡リスクが低いことがわかりました。
OPCsの歴史と薬効
OCPSはぶどうの種子や樹皮から抽出され、ピクノジェノールという名前で販売されています。
ピクノジェノールは、ボルドー大学のジャック・マスケリエ教授がビタミンCの働きを高める物質の研究を行っている時に、ぶどうの種子から単離抽出したことがきっかけです。
続いて、OPCsの薬効は以下の効果が判明しました。
- 抗酸化力がビタミンCの約20倍
- 過酸化脂質などの有害物質の酸化を遅らせる効果
- 組織結合に関わる酵素が持つ、有害な作用の抑制
フラボノイド類
植物の白や黄色の色素のことで、ルチンという成分は1842年にヘンルーダという植物から抽出され、後にビタミンPと呼ばれるようになりました。
フラボノイドの基本的な構造
2つのベンゼン環が炭素原子3つでつながっているフェニルクロマン骨格という構造です。
植物生理学上の役割
フラボノイドは、クロロフィルやカロテノイドといった色素も含み、抗酸化物質、酵素抑制物質、日光を遮るフィルターとして機能し、植物組織を紫外線から守る働きをします。
さらに、植物の成長にも関わりがあり、成長の調整や成長ホルモンの生成、植物を感染から守るなどの役割もあります。
治療的な作用
様々な実験で、心臓や循環器系に作用し、毛細血管を強くするという働きが証明されました。さらに、ビタミンCとの相乗効果もあることから、”生物ストレス緩和剤”とも呼ばれています。
フラボノイド系化合物にある多くのフェノール性水酸基は、酵素の表面に容易に付着し、酵素にある強力な阻害作用を防ぎます。
例えるならば、戦隊物の悪役が作戦を実行しようとした時に、ちょっとしたイレギュラーで計画が失敗してしまうのをイメージすれば分かりやすいかもです。
次に例題として、酵素とその抑制物質について紹介します。
アルドース還元酵素
この酵素は糖尿病による白内障を引き起こす酵素で、玉ねぎに含むケルセチンは、強力な抑制物質だと考えられています。
炎症性プロスタグランジン
炎症に関わってくる酵素で、ロイマトリエンという物質もあります。
この酵素が作り出される前の段階で、バイカレンという酵素が働くと、プロストグランジンの生成を抑えるとされています。
続いて、イソフラボンとアントシアニンも紹介します。
イソフラボン
主に豆の仲間に含まれているフラボノイドで、科学構造が女性のエストロゲンに似ていることから、植物のエストロゲンと考えられています。しかし、エストロゲン作用は弱いということは考慮しておきましょう。
臨床実験では、更年期のホットフラッシュや、乳房の腫瘍、その他のがん予防に有効であると確認されました。
アントシアニン類
青、赤、黒色の色素で、これらの色は化学構造が大きな影響を及ぼし、アントシアニン類の基本骨格にある糖に、水酸基などがくっつけばくっつくほど色を吸収できる波長が長くなり、色がオレンジ色~青色に変化します。
つまり、水酸基が少ないアントシアニンは赤に近くなり、反対に多い場合は青に近づくということです。
アントシアニンの薬効
アントシアニンを多く含むハーブの代表的なものはビルベリーですが、このハーブは古くから血液循環や毛細血管などに影響を及ぼすと考えられていました。
数々の研究や臨床実験の結果、ビルベリーの有効成分は、OPCsやフラボノイドでなく、アントシアニンによるものだと判明しました。
アントシアニンを多く含むベリー類は活性酸素を除去し、脂質の過酸化を遅らせ、さらに炎症性疾患にかかっている間の体の結合組織の退化を防ぐ、コラーゲンの安定化作用があるとされています。
あとがき
今回は、タンニン類の解説をしました。
ポリフェノールは身体に良いということは聞いたことがある方は多いでしょうが、なぜ身体に良いかということをこの記事で学んでくれたら幸いです。そして、日常生活の中で取り入れて健康に役立ててくれると嬉しいです。
今回の記事はここまでです。またの記事でお会いしましょう。