今回紹介するハーブは、古代から魔除けや防虫として使われていたアルテミシア。約300種類存在する中のごく一部分をご紹介します。
目次
Artemisia absinthium
読み方:アルテミシア・アブシンチウム
特徴
別名ワームウッドと呼ばれる、高さ1mまで成長する多年草です。灰色がかった緑色の葉と小さい球状の花を咲かせます。大きな特徴としては、口にすると非常に苦い点です。
薬用
抗炎症、神経の強壮、子宮刺激、解熱、止血作用があり、消化不良、食欲不振、胆嚢の疾患、回虫の駆除に内服し、打撲や噛み傷には外用として利用できます。
Artemisia annua
読み方:アルテミシア・アヌア
特徴
生長の早い一年草で別名スイートワームウッドと呼ばれます。高さは1.5m~3m、幅1~1.5mと大型になり、直立性の赤い茎と鋸歯のある複葉が特徴です。
薬用
抗菌性に優れ、マラリアの宿主を破壊する作用に加え、解熱、止血作用があります。マラリアなどの発熱性の疾患や熱射病に内服し、鼻血や出血性発疹、皮膚のただれに外用として使うことができます。
Artemisia caucasia
読み方:アルテミシア・カウカシア
特徴
高さと幅が15~30cmと比較的小型な常緑・半常緑の灌木で、葉には繊細な切れ込みがあり、扇のような房状にシルバーグリーンの葉が広がります。
実用
良い香りがし、生かドライの状態でハーブの束を作り、インテリアにすることが可能です。
Artemisia arborescens
読み方:アルテミシア・アルボレスケンス
特徴
香りの良い直立性の常緑及び亜灌木です。巻く性質のある繊細な切れ込みのある葉と小さな黄色い花を咲かせるのが特徴です。
薬用
肝臓・胆嚢の強壮、解熱作用があり、黄疸、肝炎、胆嚢疾患、発熱性疾患に内服します。
Artemisia capllaris
読み方:アルテミシア・カプラリス
特徴
切れ込みが繊細で良い香りな枝の多い亜灌木です。茎は紫がかった茶色に加え、夏の終りには紫褐色の花を付けます。また、薬用としてArtemisia arborescensと同じように使うことができます。
Artemisia lactifrora
読み方:アルテミシア・ラクティフローラ
特徴
別名、ホワイトマグワートと呼ばれる生長の早い直立性の多年草です。羽のような花が夏の終りと秋に咲きます。
実用
花のついている茎はハーブの束にすることが出来るほか、切り花のアクセントにしても良いかもしれませんね。
Artemisia pontica
読み方:アルテミシア・ポンティカ
特徴
根茎の灌木で、綿毛に覆われたシルバーグリーンの長さ4cmのはが特徴です。夏には小さいくすんだ黄色い花を咲かせます。主な用途としてドイツワインの香り付けに利用されるほか、庭園の縁取りなどにも良いです。
Artemisia vulgalis
読み方:アルテミシア・ウルガリス
特徴
高さ60cm~1.7m、幅30cm~1mの多年草で、赤紫色の茎と葉の裏が白くなるのが特徴です。夏に赤褐色の目立たない花を咲かせます。
各種利用法
料理
アルテミシア属の中では珍しく味が良いため、イギリスやドイツ、スペインでは伝統的な料理の香辛料に使われます。また、肉料理の詰め物にも活躍するのです。
薬用
消化不良、月経不順、回虫・ぎょう虫駆除に内服することができます。使い方にも差があり西洋では月経の促進に使われ、東洋では子宮の出血と流産を防ぐという全く逆の使われ方をします。
中国ではもぐさと呼ばれ、乾燥、圧縮したものを患部に乗っけて火を付ける「お灸」、アーユルヴェーダでは神経衰弱、女性の生殖器官、真菌感染症に使われます。
歴史
有史以前の時代から栽培され、古くから虫や病原菌の駆除剤として利用されており、伝染病や嫌な匂いを遠ざけるノーズゲイズ用のハーブとして人気がありました。
過去には突拍子もない治療法が実在し、”アルテミシアの灰と古いサラダオイルを混ぜたものを抜け落ちた髪の毛のところに塗ると生えてくる”という髪の後退が気になる方にとっては朗報かもしれませんが医学的な根拠は一切ないので悪しからず。
19世紀、監獄から伝染する発疹チフスを防ぐために、月桂樹とアルテミシアを中庭に置く習慣がありました。同じ時期、アブサンスという食前酒が発明されましたが、この飲み物がとんでもないトラブルを引き起こしました。
アブサンスにはワームウッドのエッセンシャルオイルが使われていましたが、ワームウッドオイルにはツヨンという成分が含まれており、この成分は中毒性に加え、過剰摂取すると幻覚や中枢神経がおかしくなるということが判明しました。
その後ワームウッドオイルは世界各国で使用を禁止され、今日での食前酒アニゼットやヴェルモットにはツヨンが含まれていないのでご安心を。しかし、何処かの地方ではこの危険なお酒を密造しているらしいので、万が一見つけてしまっても飲まないで下さい。
とても古く、まだ人と自然とが密接につながっていた時代、アングロ・サクソンと9つのお守りという9種類のハーブがありました。そのうちの一つがマグワートであり、ウィッチクラフトと呼ばれる豊穣の儀式と密接な関係があり、”マザー・オブ・ハーブズ”と呼ばれていました。
あとがき
今回はアルテミシアについて解説しました。
ここでの情報はほんの一部分に過ぎず、掘り下げれば掘り下げるだけ新たなことがどんどん発見でき、その深さの一端をこの記事を読んで感じていただければ嬉しいです。
ツイッター開設したのでフォローしてくれると嬉しいです。→@kemu26559875
今回の記事はここまでとなります。また次回の記事でお会いしましょう。