今回は古代から染料として使われていたハーブ、ベニバナについて解説していきます。
目次
Carthamus
あざみのような14種の一年草と2,3種の多年草からなる植物で、アジアと地中海地域に分布しています。この花に含まれる色素「カルタミン」には水で抽出すると黄色に、アルコールで抽出すると赤色になるという特徴があり、1種類で染め分けることが可能なハーブです。
属名のCarthamus(カルタムス)は着色するという意味のアラビア語qarthamiを語源としています。
C.tinqutoris
読み方:カルタムス・ティンクトリアス
直立した茎と棘だらけの葉を持ち、背の高いシルエットが特徴です。夏には棘のある苞葉に縁取られた黄色い花が咲き、その後長円形の白い果実を結びます。現代では果実を採るためにオーストラリア、中国、インド、アフリカ、地中海沿岸で栽培されています。
各種利用法
料理
種子は絞ってオイルに、若い葉はおひたしとして使用され、、コレステロールを下げる治療食の材料に使われます。その理由として、種子にはオメガ3系脂肪酸であるリノール酸を70%含んでいるためです。そのため現代ではサラダ油やマーガリン、ショートニングなどの原料に加工されます。また、サフランの代用に使うことも可能です。
実用
ベニバナの油煙から採れる紅花墨は、書画用の墨として用い、オイルを絞った後の絞りカスはコストの低い家畜の飼料として再利用することができます。
薬用
苦味のある芳香性のハーブで、循環器系、心臓、子宮の刺激、解熱、消炎、鎮痛、血中コレステロール値の降下作用があります。
冠動脈疾患、捻挫、更年期障害、黄疸、はしかに内服することができ、外用では打撲、捻挫、皮膚炎、外傷、関節痛と麻痺に花を利用します。
栽培
耐寒性があり、日向の水はけの良い乾燥気味の土壌を好みます。直根性で移植を嫌い、高温多湿の環境にさらされ続けると、炭疽病の原因となるので注意しましょう。
収穫は花頭を摘み取り、生か乾燥させたものを成分抽出液に加工します。気をつける点は、咲き切った管状花を子房を残すように取り去り、種子に成長したらオイルを抽出しましょう。
歴史
古代から食品、繊維製品、口紅や頬紅等の化粧品の着色料として需要が高いです。仏教の修道僧や尼僧の僧衣、古代エジプトのミイラには伝統的にこの花で染めるという習わしがありました。
日本には3世紀半ばとも4,5世紀にもたらされたと諸説ありますが、こちらでも染料として使われていました。
その後江戸時代に入り山形藩がベニバナ栽培を奨励し、一大産地に育て上げ、高級化粧品の着色料として京や大阪で飛ぶように売れていたという記録があります。
ベニバナの俗称で「スエツムハナ」と呼ばれることがあり、これは茎の末。つまり先端から花を摘んでいる様子から付けられたという説と、源氏物語に登場する末摘花(常陸宮の姫:ひたちのみやのひめ)の鼻が赤いことから「紅鼻(べにばな)」というあだ名で呼ばれ、同じ読み方の紅花(べにばな)と文字をあてたという説が存在するのです。
あとがき
今回はベニバナについて解説しました。
私はベニバナは染料として使われている程度のことしか知りませんでした。
現代でも利用されていることや、スエツムハナという俗称を初めて知り、由来が源氏物語に登場する人物に因むという説を読んで、昔の人のセンスの良さに脱帽です。
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