今回は田んぼの近くに生える春の風物詩のつくしの成長したスギナと、カリフォルニアでは家庭常備薬として珍重されているエリディクティオンの2種類を解説していきたいと思います。
目次
Equistum arvenes
読み方:エクセトゥム・アルウェンセ 英:horsetail 和:スギナ
耐寒性の胞子を作る塊茎を持つ多年草です。枝分かれした直立性の細い茎には歯片の付いた葉鞘と輪生した横に張る枝があります。これが春に食べられているつくしで、胞子を飛ばして増えることからシダの仲間だと言えますね。
世界中には29種類が存在(オーストラリアを除く)し、涼しく湿っている環境ならばどこにでも生えます。スギナ(Equistum arvense)とトクサ(Equisutum hymale)はヨーロッパや北米、アジアに見られます。この植物は有史以前から殆ど変わらず、当時、分解して炭層を作る大部分を形作り、数百万年前の石炭紀の時代は気と同じくらいの高さであったとされています。現在は繁殖力が非常に強く、有害な雑草として扱われていることが多いですが優れた薬効のあるハーブであることは間違いありません。。
こんな厄介者とされていますが生態は変わっていて、ニコチンを始めとするアルカロイドと様々なミネラルを含有しています。特にシリカ(SiO2二酸化ケイ素のこと)を多く含んでおり、中世の時代から18世紀の間は鍋類や白銅製品を研ぐのに使用していました。
トクサも同様に扱われ、かつてオランダでは有り余るほど生えており、輸出されていました。トクサ属の中にはミネラルの他に金(植物に含まれているため量は非常に少なく、取り出すには大変な手間がかかります。)が含まれていたため生物指標としていた時代もあったようです。
各種利用法
料理
春に出てくるつくしは、ハカマと呼ばれる部分をとっておひたしにするか、佃煮すると美味しいです。
ハーブティー
緑茶に煮た香りで癖のない味が特徴です。シリカには体内の傷や傷跡の組織が修復するのを助け、手術後や痔、月経過多などの時はこのハーブティーを飲むと良いとされていました。またカリウムがカルシウムの吸収を促進するため爪を丈夫にしたり、パサパサの髪にツヤを与える効果などが期待できます。
薬用
収斂、治癒作用のあるハーブで主に、泌尿器系に働きかけ、内外の出血を抑制する作用があります。対応する症状としては前立腺炎、失禁、膀胱炎、尿道炎などの尿路器系の感染症に活躍する他、血尿や排尿障害、良性の前立腺炎に対しても利用価値のあるハーブです。ほかにもホメオパシーでは内外に利用されます。
エネルギーとしての働き
草原に吹き抜ける爽やかな風と一緒に芳ばしい緑の香りが鼻を刺激しながら、軽やかに喉元を通り過ぎていきます。喉元から胃腸へと流れ込むにつれて、背骨と腰回りに力強いサポートを感じ取れます。このハーブがもたらす真っ直ぐな安定感をもたらし、同時に体の組織を強めてくれるようにどっしりと広がっていきます。
英国流メディカルハーブ 頁121より抜粋
刺激が強いためこれを緩和するほかのハーブをあわせて利用するか、短期間での使用にとどめておきましょう。また心臓や腎臓の機能不全がある人は使用を避けましょう。
ブレンドの一例
・尿路感染=ブクー、カウチグラス
・血尿=ヤロー
Equistum hyemale
読み方:エクセトゥム・ヒエマレ 英:Dutchrush 和:トクサ
各種利用法
利用部位:茎
薬用
苦く甘い収斂性のハーブです。利尿、抗炎症作用があり、中国漢方では”木賊”と呼ばれ白内障や結膜炎、発熱性の風によるただれ目、涙目といった目の症状に内服されます。ヒンドゥー教アーユルヴェーダでは腎臓、胆嚢、泌尿器系の疾患、性病、骨折の内服薬に利用されているのです。
栽培
栽培種(スギナ)と園芸種(トクサ)はどちらも耐寒性があります。どちらも日向や半日陰の湿った土壌を好み、早春に株分けをします。また侵襲性が強く、一度繁殖したら手に負えず、根絶はほぼ不可能となるのでその点は十分に気をつけましょう。この繁殖力の強さからオーストラリア諸州では法規制の対象となっています。
Eriodictyon californicum
読み方:エリオディクティオン・カリフォルニクム
非耐寒性の低木で高さは2.5m、広がりは2m程度です。槍状の葉は表面に樹皮を含み、葉の裏には白い毛が生え、縁がギザギザしているか波打っているのが特徴です。夏には1cm程の小さなライラック色の花が約5個固まって咲きます。後に4枚のやく片がついた蒴果実るようです。この品種を含む8種は綿毛が生えていたり粘着性があります。
このハーブは北米の南西部とメキシコに分布しており、カリフォルニアのメンドシノ郡では重要な伝統薬でありながら神聖視されているハーブとしてその地域の救急箱には必ず入っています。また、フラボノイドと樹脂を含んでいることから、スペインの宣教師が北米先住民から使い方を学び、1894年~1905年と1916~47年の米国薬局方に記載された後、去痰剤として米国国定処方書に収録されました。
名前の由来は葉の白い毛と網目状になっている葉脈からerion”ウール”とdictyon”ネット”に由来しています。
各種利用法
利用部位:葉
薬用
良い香りの芳香、強壮性のハーブです。鎮痙、去痰、解熱作用があります。対応する症状は喘息、気管支炎、副鼻腔炎などの気管系に有効なほか、花粉症にも効果が期待できます。また特許製剤の咳止めに加えられているほか、苦い薬を飲みやすくするために入れられることがあります。北米の先住民は燻煙剤として使用し、口内殺菌のために噛んでいるようです。
栽培
野生種で非耐寒性植物です。日当たりの良い乾いた砂地を好みます。最低気温は5~7℃。繁殖は春か秋に刈り込んで形を整えますが、切るのは新しいものか、一年物に限ります。収穫は夏にはを摘み取り、乾燥させたものを成分抽出液、浸出液にします。
あとがき
今回はスギナとエリディクティオンという2種類を掘り下げてみました。
スギナはよく見かけて薬効があることはしってはいましたが、人の歴史が始まる何万年も前から存在して姿が殆ど変わっていないことから、ちょっと古代のロマンを感じますね。実はシダの仲間だということは初めて知りました。
エリディクティオンは名前を初めて聞くハーブで、優れた薬効と香りがあるということはわかりましたがどんな香りなのか非常に気になる植物でした。
”向上心”、”驚き”、”努力”、”意外”
向上心と驚きはその成長スピードに由来し、一日に1cmのびるからです。
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今日まで書き続けることができたのは読んでくださっている人のおかげです。本当にありがとうございます。拙い記事ではありますがこれからも書き続けていこうと思うので、どうか応援して下さると大変嬉しく思います。
今回の記事はここまでとなります。また次回の記事でお会いしましょう。
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・ハーブの歴史百科 原書房 キャロライン・ホームズ
・ハーブの歴史 原書房 ゲイリー・アレン
・ハーバリストのための薬用科学 フレグランス・ジャーナル社 アンドリュー・ペンゲリー
・ハーブティー辞典 池田書店 佐々木薫
・ハーブ大全 小学館 リチャードメイビー
・ハーブ大百科 デニ・バウン 誠文堂新光社
・エッセンシャルオイルデクレファレンス 第6版
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