今回は果物としてたべられているビワについての解説ですが、実は古くから薬として使われている一面もあり、美味しいだけではなく薬としても有用なことを知っていただければと思います。
目次
Eribotrya japonica
刃先が尖っている波型な倒卵形の葉を持ち、長さは25cmと大きめ。冬に香りの良い花を咲かせ、直立した房咲きになるのが特徴です。実は御存知の通り食べることができ、長さは4cm程です。
原産地はヒマラヤ、東アジア、マレーシアなどで霜に耐性がある品種や逆に寒さに弱い品種などが合わせて27種ほど存在し、その中でこの品種を含む2,3種がその美しい葉と美味しい実のために栽培されています。また、暖かい地域では中庭や塀のそばに、寒い地域では観賞用としてコンテナなどで育てられているようです。
学名の由来はギリシャ語で毛を意味する「erion」と一房の葡萄という意味の「botrys」に由来しています。ぶどう要素は全く無いですがこれは花の咲き方がブドウに似ていることに因んでいるからだと言われています。
各種利用法
薬用
苦味のある去痰性のハーブで、咳と嘔吐の抑制作用に加えて細菌やウィルス感染にも効果があるとされています。対応する症状としては気管支炎、発熱性の風邪の咳、吐き気、嘔吐、しゃっくり、頑固なおくびなどに内服されます。また、東洋では最も一般的な咳止めとして利用されており、多くの特許製剤に使用されているようです。
栽培
園芸用品種で霜に耐性があります。日向の水はけの良い肥沃な土壌を好み、繁殖は秋か春に種をまくか挿し木をすることで増やすことが可能です。手入れは春に若枝を刈り込みましょう。収穫は葉を必要に応じて摘み取り、毛を取り除いてから(内服するときに飲みやすいように)生か乾燥させたものを煎じ薬やゼリーに加工します。
実用
実は生食やゼリーに加工することができ、葉は枇杷色に染色が可能です。また木は粘り強いのが特徴で、杖や木刀を作るのに適しています。
歴史
平安時代の書物「三代実録」や「本草和名」などにも登場し、利用されていました。奈良時代に作られた貧しい人や病人が治療を受けるための施設「施薬院」は時の皇后光明皇后が命じて作らせ、この時ビワの葉での療法が行われていたと言われています。
江戸時代に入ると「枇杷葉湯(びわようとう)」が登場し、これは夏の暑気払いのためによく飲まれていました。主な材料はビワの葉をベースに「肉桂(シナモン)」、「藿香(パチュリ)」、「莪朮(ウコン)」、「呉茱萸(ゴシュユというミカン科の植物)」、「木香(キク科の植物)」、「甘草(リコリス)」などを混ぜ合わせて煎じたもので、薬店の釜で売っていたり、天秤棒で量り売りされていました。ビワの名前の由来は葉や実の形が楽器の琵琶に似ているためと言われています。
長崎地方では江戸時代に中国の通訳、唐通事から手に入れた中国南部原産のびわの種をまき、この品種が茂木びわ栽培のルーツとされています。他にも関東よりも西の地域で海沿いを中心に産地が広がっているのです。
あとがき
今回はビワについて掘り下げてみました。
ビワは食べるだけと思っていましたが、調べてみると実は古くから食べられているだけでなく人を救うために活用していたという事実を知り、意外な一面を知ることができて勉強になりました。各地にビワの生産地があるので、食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね。
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今回の記事はここまでとなります。また次回の記事でお会いしましょう。
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