今回紹介するハーブは、鹿の角に似た形の地衣類の一種、オークモスです。
Evernia purnastri
読み方:エウェルニア・アプルナストゥリ
柔らかく垂れ下がる鹿の角にそっくりな枝を持つ地衣類、いわゆる苔の仲間です。上はグレーグリーン色で下側は白く綿状をしており、ピンクがかった褐色色の胞子を作るディスクは滅多に出来ません。
防腐保存処理したミイラに詰める際の詰め物として、ギリシャやキプロスからエジプトに輸入されていました。数世紀後、ヨーロッパではカツラの装飾として需要が急増していき、その記録はアスカロンのサラディンが記したCompendium Aramotorium『必携芳香』にかかれています。
現在では年間約9000tのオークモスがコルクカシと果樹類から収穫されており、主な生産地はフランス、バルカン諸国、モロッコなどです。この植物から抽出された揮発性有機化合物をベンゼンで抽出し、固形のヴィスコースという形に加工します。また、オークモスはなぜか日本のワサビと混同され、後者は香りにおいては勝っていますが定着剤に加工した際には質が劣ってしまいます。
利用部位:全草
実用
芳香がある坑細菌性のハーブでフマル酸という成分を含んでおり、これは結核菌を抑制する作用があります。
主に香水の定着剤として利用されることが多く、柑橘系、琥珀系、シダ系の香水に利用されています。
栽培
野生種で耐寒性があります。主に落葉樹の幹に生え、時にはトウヒ類につくこともあるようです。また、垣根、壁、岩、地面に生えることもあり、環境さえ整っていればどこでも成長できるのかもしれませんね。
地衣類の生態や繁殖のメカニズムは複雑で、繁殖の試みは未だになされていないようです。またこの植物は0.021p.p.m※という僅かな硫黄に当たると傷んでしまう程空気の汚れに敏感です。このことからこの植物は空気が綺麗な場所じゃないと育たないことが予想できますね。
※p.p.m=100万分の1なので空気中にちょっとでも硫黄があると反応するっていう認識で大丈夫です。
あとがき
今回はオークモスについて解説をしました。
このハーブを初めて知った時、多くの用途に驚かされました。紀元前ではエジプトのミイラ用の詰め物、中世の時代にはカツラの装飾に用いられ、そして現在では香水の定着剤として利用されており、このハーブが何世紀にも渡って使われていることに、植物の可能性を感じました。
しかし、この植物も環境汚染に晒されて生息域が減少していってしまいそうな気がして、環境保護に取り組んでいかないといけないなと思いました。
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今回の記事はここまでとなります。また次回の記事でお会いしましょう。
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・ハーブの歴史百科 原書房 キャロライン・ホームズ
・ハーブの歴史 原書房 ゲイリー・アレン
・ハーバリストのための薬用科学 フレグランス・ジャーナル社 アンドリュー・ペンゲリー
・ハーブティー辞典 池田書店 佐々木薫
・ハーブ大全 小学館 リチャードメイビー
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