今回はグラウンド・エルダーAegopodium podagrariaを歴史の視点から紹介します。
目次
グラウンドエルダーの
ざっくりとした歴史
ローマ人が医薬品の一つとして帝国全土に伝えた。
一時的に文書記録から消えていましたが、紀元1000年より前に旅の修道士によって再びブリテン島に伝えられました。
グラウンドエルダーの
エピソード
ラテン語名のAegopodiumは「ヤギ」を表すaix、「小さな足」を意味するpodion、そして「足の痛風」を意味するpodagraに由来。
痛風の名前が示すとおりローマ時代に痛風を和らげる湿布剤として「ガウトウィード」とも呼ばれていました。
後にキリスト教の聖人ジェラルドがこのハーブを使って痛風を癒やした伝説から「ハーブ・ジェラード」とも。
ほかにも「司教」を意味するビショップウィード、ビショップスウォードという別名は修道士によって再び伝えられたことに由来します。
またアッシュウィードやグラウンドアッシュという呼び名もあって、これはトネリコ(ash)の葉に似ているためです。
グラウンドエルダー
保存と調理法
若葉だけを摘み取って料理に使い、ほうれん草代わりに使うこともできます。葉の水分のみで茹でましょう。
魚料理に使うホワイトソースには細かく刻んだ葉を加えると、パセリやセリのような香りを追加できる。
ラザニアの肉や魚、野菜の層にこのハーブを加えてもよい。
保存方法は季節ごとに摘み取るのがベストです。
グラウンドエルダーの
レシピ
若葉を摘み取って食べる方法は、旺盛な繁殖力を抑える一つの方法。
ほうれん草と同じような使い方ができるので葉を炒めてオムレツに入れるのもあり。
ほかにもバターと牛乳、卵とともに炒めるとより風味が増します。つまりキッシュの中身にすることが可能なのです。
グラウンドエルダーのキッシュ
材料
・グラウンドエルダー ひとつかみ
・卵 4個(卵黄と卵白を分ける)
・牛乳 250ml
・チーズ 125g
・パイ生地 一つ
下準備
オーブンを200度に加熱しておく
作り方
1.細かく刻んだグラウンドエルダーをパイ生地に敷き詰める
2.卵黄とクリームを混ぜ合わせる
3.卵白をメレンゲ状になるまで泡立てたら2に混ぜ込む
4.3を火にかけてある程度固まったらパイ生地に流す
5.40分焼いたら完成
グラウンドエルダー
栽培方法
非常に繁殖力が強いためかつて住んでいた住人によって庭に植えられたものがそのまま育っている場合が多い。
一旦根付いてしまうと取り除くのはほぼ不可能。小さな根の一欠片からあっという間に広がってしまう侵食性がある。
保湿力がある半日陰の土壌を好み、果樹の根本で春球根の間に植えるのが良い。
ただし何度も書いているように若葉を摘み取って春先に食べ尽くしたり、種子が落ちるのを防がないと侵食されます。
侵食されるかも知れないというリスクを負うのならば白い斑入りの品種、「ヴァリエガータ」がおすすめ。
強すぎるハーブ
歴史的な視点では城や修道院、コテージ近くにうわっているハーブは栽培に特別な配慮を必要とし、新しいものや薬草として価値の高いものが多く、かつては料理用のハーブは農作物として栽培されるか、森の住民たちの手で原野から採取されていました。
そして繁殖力の強いハーブたちは、その性質をコントロールする必要が出てきます。
例えば今回紹介したグラウンドエルダーやレモンバーム、ヴァーベインなどは種子を落とす前に花を落とす方法が有効です。
無秩序に広がるタイプは木や金属、テラコッタなどで囲ったとしても封じ込めるのは難しい。なので近くに形の整ったハーブや一年草のハーブがある場合は離して植えるのが賢明です。
やっぱり厄介者な
グラウンドエルダー
伝統的な香草ではありますがその強すぎる侵食性により厄介な面も持ち合わせています。
植物学者のジョン・ジェラードもこの性質を嘆いており、16世紀の植物学者ウィリアム・コールズも「暴れん坊」と読んでいました。
なんで「暴れん坊」?
種子が乾燥して落下し、そこからどんどん広がっていく様子を観察していたため。
青葉のハーブか増えていくにつれて有害な雑草としてのけものにされていきました。
まとめ
かつては薬用としてもてはやされていました。しかし時代の流れと共にその繁殖力が仇となってしまい今日では雑草扱い。
一応ほうれん草代わりに食べることも可能ですが、もし料理に使う場合は若葉のみを使うこと。
栽培するならしっかり隔離をして管理しましょう。
こんな時代とともに薬用から雑草へと転落してしまったハーブ。
それがグラウンドエルダー。