香りの逸話と歴史

宗教儀礼における香り 1

今回は古来から続く、宗教と香りにまつわることをまとめていきます。

人類と香り

原始時代の人類も、自然の花々や樹木など、良い香りのものを燃やして嗅いでいたと言われている。

火を使うことを覚えて、とても良い香りのする植物を見つけるように。

最初は煙と共に感じられた芳香は、天に登るように上昇して消えてなくなる。

このように植物を焚いて芳香物質を漂わせるものを“焚香料(インセンス)”という。

英語のperfumeは、香り、香料を意味するラテン語のPer Funumに由来し、焚香料が起源であることを物語っている。

こうして焚香料は洋の東西を問わずに、宗教儀式空間の演出に利用されるようになった。

古代エジプトにおける香り

この時代では、太陽神ラーに香りを、朝、昼、夜の3回焚いていたとされる。

それぞれに意味があり、朝は太陽が無事に登るように、昼は没薬を、夜は16種の様々な香料を用いていた。

これを行うのは王や神官などの位の高い人物で、片手に香炉(柄香炉)を持ち、丸薬状に丸めた薫香を焚べて捧げる様子が描かれている。

ハトシェプトの啓示

紀元前15世紀頃、デル・エル・バハリ神殿の壁面には、エジプトとプントという国の交易を示す、バスレリーフ※がある。

ここで登場するのは、古代エジプト第18王朝の女王、ハトシェプト。

彼女はデル・エル・バハリの神殿で神の啓示を受けた。

この啓示により、プントへ5隻の船を派遣し、その結果没薬や香木などを大量に持ち帰った。

これを記念してバスレリーフが作られたと言われている。

※バスレリーフ
浮き彫りの彫刻のこと。

碑文には

“地上の王座を滑る大神アモンの捧げ物としてプントの地より数々の貴重品と共に、緑濃く茂った31本の香樹がもたらされた”

と記されている。

7つの聖なるオイル

回路博物館には、サッカラ出土のアラバスター製のタブレットが保管されている。

これは7つの聖なるオイルと呼ばれ、それぞれのオイルには

・祭儀香水
・ヘケヌゥ(オイル)
・シリアバルサム
・ネチェネル(芳香剤)儀式用オイル
・極上の杉オイル
・極上のリビアオイル

などの名前が、ヒエログリフに刻まれている。

これらは最古のピラミッド、供物リストや、最古のピラミッドテキストにも欠かれており、新王国時代の葬祭パピルスにも書かれている。

オイルは日々の神殿における儀式の中で、神に捧げるもの、そして死者に対しても重要な役割を持っていることが分かる。

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