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ヒナチノコズチ
基本情報
学名:Achyranthes faurie
科名:ヒユ科
属名:イノコヅチ属
産地:中国、日本(茨城、奈良)
葉
尖頭で短い柄で対生し、葉身は5-15cmの長楕円から広い卵型をしている。
全草
高さは40-100。夏と秋に長い穂状花序頂点と葉の脇から生え、緑がかった白い花をつける、果実は熟すと苞が反り返って衣服に付着する。
茎は正方形で硬く直立し、節は紅紫色を帯びることがある。また、丸く肥大することがあり、この様子が牛の膝に見えることから『牛膝(ゴシツ)』と呼ばれる。
ヒナタイノコズチ
概要
東アジア各地に広く自生するヒユ科の多年草で、果実は衣類にくっつきやすいため『ヒッツキムシ』とよばれる。
主に山野や道端などの日当たりの良い場所に自生することが多い。
ヒナタイノコズチの仲間であるヒカゲイノコズチ(Achyranthes japonica)は林の木陰などの日が当たらない場所を好む。
しかし、根が大きくならないため生薬としては用いられない。また、葉や茎に生える細い毛が少ないのも特徴。
トウイノコズチ(Achyranthes bidentata)はヒナタイノコズチよりも大型で、中国の河川や山南などに自生ないし栽培されている。
生薬としての価値
生薬では根が牛膝と呼ばれる。9-11月に根を採集し、日本産のものは漂白加工せずに乾燥させる。良いものは太くて柔らかいものが良いとされ、僅かに香りと甘さがあり、粘液性である。
主成分
エクジステロン
植物エクジソンと呼ばれるホルモンのエクジステロン、イノコステロンなどを含む。また、オレアノン酸をゲニンとするサポニンや粘液質を含む。
主な薬効
抗アレルギー作用
抗腫瘍作用
水性エキス
抗アレルギー、血圧降下
エクジステロン
イノコステロン
実験的高血糖抑制作用。
水及びメタノールエキス
抗腫瘍作用
オレアノン酸
実験的肝障害抑制作用
漢方処方
疎経活血湯(ソケイカッケットウ)
牛膝散(ゴシツサン)
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
神農本草経ぼ上品に収載。漢方では通経や利尿、関節炎や腰痛に用いられる。妊婦、月経過多、下痢のものには使用しない。
ヒナタイノコズチの成分は、イノコステロンやエクジステロンといった。「植物エクジソン」が含まれている。
そもそもエクジソンとは昆虫の前胸腺から分泌されるホルモンで、脱皮や変態を促進するヒドロキシエクジソンの前駆物質である。
ここで疑問なのは、“なぜ植物が捕食者である昆虫の成長を促進させる物質を持っているのか?”という点。結論から言うと、『生きるための投資』。
簡単に言うと、このホルモンで虫を早く成長させることによって最終的に食べられる葉っぱを減らすという防御機構になっているのです。
食べられる前提というのが哀愁を感じさせますがね・・・
学名解説
Achyranthesやカラスウリ属のTrichosanthes トリコサンセスは語尾-anthes(~の花)で終わる。
イノコズチ科のAchyranthesはギリシャ語でアキョロン(籾殻)と花。英語名のchaff flowerのchaffのチャフも籾殻の意味。
種小名faurieは植物学者のフォーリーにちなむ。
和名の由来
ヒナタイノコズチは名前の通り日向を好むイノコズチの意味。由来には諸説あり、
・肥大した節が「猯(イノシシ)の子」の「槌」。つまり膝に例えた説
・「イノシシの轡」→イノクツシ→イノコズチに訛った説
・猪の膝に種子がくっつくという意味の「イノシシの子付き」も転訛説。
漢方の「牛膝」
茎の節が牛の膝に見えることに由来するため。余談だが牛の膝に見える部分は、人で言うかかとに相当する。