今回は毒草といえばこれ。“トリカブト”について掘り下げていきます。
目次
トリカブト
基本情報
目:キンポウゲ目
科:キンポウゲ科
属:トリカブト族
産地:日本、中国
葉は互生し、柄がある。裂片は欠刻状歯縁。茎は直立し、秋に短円錐花序が頂点に咲く。花は青紫色で、兜状。
トリカブトはキンポウゲ科トリカブト属の総称で、すべての部位に毒(アコニチン)がある。
日本に自生するトリカブトは約40種で、花が咲いているときは間違うことは無いが、芽吹きの頃にはニリンソウ、セリ、ゲンノショウコなどと間違いやすい。
中毒事故を起こすと
・嘔吐
・下痢
・呼吸困難
などを引き起こして死に至る場合もある危険な植物。
ハナトリカブトは花が大きくまとまっているため、栽培されて切り花として売られている。
生薬としての
トリカブト
生薬名:附子(ブシ)
ハナトリカブト Aconitium carmichali Debeaux またはオクトリカブトAconitium japonica Thunbergの塊根が原料。
主成分は
ブシジエステルアルカロイド(強毒性)
アコニチン
アチシン系(低毒性)
ベンゾイルアコニン
強心成分
ヒゲナミン
コリネイン
主な薬効
・鎮痛
・強心
・利尿
・代謝促進
アコニチンはNa+チャネルの第二結合部位に結合し、脱分極を引き起こす。(簡単に言うと開けっ放しにすること)
すると運動神経の伝達が阻害されて、骨格筋の麻痺を引き起こす「神経毒」なのである。
薬理作用としては上のもの以外に、催吐作用や局所麻酔作用、交感及び副交感神経遮断作用、不整脈などの多様な作用がある。
漢方処方
麻黄附子細辛湯(まおうぶさいしんとう)
真武湯(しんぶとう)
漢方では鎮痛、抗リウマチ、強心作用を目的に使用される。意外にも附子が使われる漢方は多い。
だが毒性が強いため高圧蒸気処理によって毒を減らす処理が行われる(これを修治 しゅうじという)が、熱感やほてり、しびれなどが現れたら使用を中止する。
性状
淡い褐色から黒褐色の円錐形。秋に塊茎を折り取って水洗いし、乾燥後は密閉容器に入れて保存。
切断面は固く光沢があり、加工の方法によって色は異なる。また、弱い特異な匂いがする。
学名の由来
トリカブト属はギリシャ語のアコニートンに由来。文献によって説が違う。
1.投槍説
ギリシャ語のアコーン(投矢、投槍)に由来。
2.地名説
トリカブトが豊富に生えた地名アコナに由来。
3.猛毒で即死する説
ギリシャ語のコニス(塵)に否定の意味が加わり、もがき苦しむことなく死へ誘うことに由来。
4.岩の上説
5.殺害説
ギリシャ語で殺す、虐殺するの名詞形、コネーに由来する説。
俗名トリカブトの由来
これにも諸説あり、
1.鶏のトサカに似ている説
2.烏帽子に似ている説
3.雅楽奏者の衣装説
などなど様々。
附子の語源
根の生長に関係があり、茎が出る母根の周囲から新しい芽をつけた小さな根っこを指し、「母に附く子」という意味。
ほかにもカラスの頭を連想させるため「烏頭(うず)」と呼ばれている。
現在ではそのまま乾燥させたものを烏頭、加工したものを附子と呼び分けている場合もある。