今回解説するのは、ガーデナーにとっては雑草扱いされていますがハーバリストにとっては役立つカウチグラスとグラウンドカバーとして人気があるイカリソウの2種類です。
目次
Elymus repens
読み方:エリムス・レペンス
直径3mm程と細い根を張る地下茎の耐寒性多年草です。くすんだ緑色の葉は掌状に分かれ、夏に小穂がジグザグに並び、直立した花穂が長い軸に付きます。約100種ほどが存在し、北半球の温帯地域に分布しています。ヨーロッパや北アフリカ、シベリア、北米などに蔓延っている雑草で、一度繁殖すると根絶は非常に難しいです。
この植物は園芸を趣味にしている人にとっては迷惑な存在ですが、ディオスコリデスの時代(約1世紀頃)から本草学や薬草学に登場した重要な薬草であり、ハーバリストの中にはこのハーブが薬用植物の中で最も役立つと言わしめる人もいます。主に前立腺炎の治療薬に加えられることが多いほか、穏やかで耐性ができにくく、副作用もないという点も評価されています。学名の由来はギリシャ語で「穀物、シリアル」を意味するelymosを語源としているようです。
各種利用法
利用部位:根茎
薬用
鎮痛性のハーブで、腎臓と腸の排出機能を促進、コレステロール降下、感染除去作用があります。主な症例は腎臓、膀胱疾患(特に前立腺炎や膀胱炎)、痛風、リューマチに内服することが出来ます。
ブレンドの一例
泌尿器系の利尿と殺菌作用に優れたブクーや、排尿時の痛みが強い場合にはマーシュマロウのはと一緒に摂取するのもオススメです。
独特な土臭さはあるものの、とても軽やかなエネルギーを持ったハーブです。まるで柔らかいコットンのような、ふんわりとした舌触りは、滑らかに喉元から下腹部、膀胱、泌尿器系の器官にと広がっていきます。さざ波のように静かで優しく、丁寧にしっとりとしみ渡り、泌尿器官当たりの不快感や熱、乾燥を改善し、心地よい感じにしてくれます。
英国流メディカルハーブP80より抜粋
栽培
栽培品種で耐寒性です。日向か半日陰のどんな環境にも適応することが出来ますが、脆い砂質の土壌で育った根茎の作柄が一番良いとされています。繁殖するには春か秋に株分けで増やすことが可能です。この植物は非常に侵襲性が強く、根絶するのは非常に難しいのでコンテナに植えて結実しないようにしましょう。
収穫は同種療法で用いる場合はフレッシュを使い、それ以外は乾燥させて煎じ薬や成分抽出液、チンキに加工しましょう。
Epimedium sagittaum
読み方:エピメディウム・サギッティウム
根茎性の多年草で三葉の皮質の葉が特徴です。葉は披針形で長さは5cm、葉の縁は棘のある鋸歯状で春に小さな花が咲きます。
この種を含む25種が地中海沿岸地域や西アジアに分布し、ここで取り上げる品種は中国中央部の湿った林地に見られ、日本にも自生しています。様々な種がグラウンドカバーに使われており、最初に登場したのは神農本草経という中国の歴史書に薬用ハーブとして記載されていました。
学名はディオスコリデスが命名したギリシャ名epimedeonに由来しており、意味はメディアの植物に似たものと言う意味です。
各種利用法
薬用
刺激性のある甘いハーブで、催淫、強壮作用に加えて主に肝臓や腎臓に働きかけます。血管拡張、血圧降下、鎮咳、去痰作用があり、対応する症状は喘息、気管支炎、手足の冷え・しびれ、関節炎、腰痛、勃起不全、不随意射精、早漏、高血圧、放心に内服することが可能です。実用として中国の”スプリングワイン”に加えられます。
過剰摂取はめまいや渇き、鼻血を引き起こすので注意しましょう。
栽培
園芸用品種で耐寒性があります。半日陰の水はけの良い湿った土地を好み、繁殖は夏の終りに種を蒔くか、春か秋に株分けをします。手入れは春に新芽が出ないうちに切り戻しましょう。収穫は生長期に全体を刈り取り、乾燥させたものを煎じ薬にしましょう。
あとがき
今回はカウチグラスとイカリソウの2種類について掘り下げてみました。
カウチグラスは目にしていたけれど雑草としての認識が強かったためハーブとは思わず、もしかしたら殆どの植物はハーブとして言えるのではないか?という錯覚に陥りました。
イカリソウはあまり馴染みがありませんが、もし庭の土部分を隠したいときに植えれば隠すことが出来るので、いずれ使う時が来るかもしれませんね。
イカリソウは3月21日の誕生花で、花言葉は『君を離さない』、花の咲く姿形から『旅立ち』を意味します。
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今回の記事はここまでとなります。また次回の記事でお会いしましょう。
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・ハーブの歴史百科 原書房 キャロライン・ホームズ
・ハーブの歴史 原書房 ゲイリー・アレン
・ハーバリストのための薬用科学 フレグランス・ジャーナル社 アンドリュー・ペンゲリー
・ハーブティー辞典 池田書店 佐々木薫
・ハーブ大全 小学館 リチャードメイビー
・ハーブ大百科 デニ・バウン 誠文堂新光社
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