今回取り上げるのは、キツネノマゴ属キツネノゴマ科のハーブJusticia adhatoda。和名ではマラバールナッツ、海外ではvasakaと呼ばれるハーブです。
マラバールナッツとは?
熱帯や亜熱帯に分布し、特にインドでよく使われるハーブ。
伝統医療アーユルヴェーダでは気管支系の疾患に対して使われており、その作用は鎮咳薬である“コデイン”と同等と認められている。
さらにモルモットを使った動物実験ではこのハーブから単離抽出されたエッセンシャルオイルを投与。その結果、気管鎖の気道平滑筋の弛緩作用を示した。
つまり気管支の筋肉を緩めて呼吸をしやすい状態なったことから、私達人間に対しても様々な気管支の症状に対して有効なのです。
コデイン
脳幹にある咳をコントロール分野である“咳中枢”の興奮を鎮めて鎮咳作用を発揮する薬用成分。痰の少ない空咳向きの薬に配合されていることが多い。
マラバールナッツの
具体的な薬効
結論から言うと気道に対して強力な抗炎症作用と抗アレルギー作用に加えて去痰作用を持っています。
その理由としてアルカロイドのバシシノンとバシシンという成分が含まれているためです。
具体的な例としてバシシンの誘導体であるブロムヘキシンを様々な気管支の症状を持つ30人の患者に投与する実験ではブロムヘキシンを投与した側の患者の症状が改善しました。
このことからブロムヘキシンの誘導体であるバシシンを含んでいるマラバールナッツには抗炎症作用に加えて去痰作用があると言えます。
ほかにもバシシンには子宮筋を収縮させることもわかり、分娩を誘発、促進することにも繋がります。
これらのことから現在では臨床上有益な薬品の供給源として重要視されているのです。
苦味のあるお茶に似た味であり以下の症状に対しても効果が。
・喘息
・肺結核
・間歇熱
・慢性気管支炎
に内服する事が可能。葉は喘息を抑える燻蒸剤になる。
学名のJusticiaは18世紀のスコットランド人園芸家のジェームズ・ジャスチスにちなみます。
マラバールナッツの
生態
常緑のまばらに枝分かれした灌木で卵型から披針形の葉が特徴。葉脈は浮き出ており長さは15cmほどの大きさ。
夏にピンクから紫がかった筒状の花が穂状花序に密生して咲きます。
英語では「スネークブッシュ」と呼ばれる近縁種が存在し混同されてしまうことがある。
園芸品種で有名なのはJusuticia bran-degeanaという品種で同じ属。
マラバールナッツの
歴史
インドの伝統医学アーユルヴェーダでは長い間、気管支系の疾患に対して重要な位置を占めていたハーブ。ヨーロッパにもたらされたのは1669年。
先ほど触れたバシシンに加えてもう一つ発見されたアダトティック酸についてグリーブ婦人は著書『モダンハーバル』で“下等動物、植物に有毒な影響を及ぼすが高等生物には無害である。”
マラバールナッツ
まとめ
古くから気管支の症状に対して使われ、有効成分が科学的に証明された結果、有益な薬品としての可能性を秘めたハーブ。
タイトル:ハーブ大百科 著:デニバウン
Justicia adhatoda