突然ですが、皆さんは“香り染め”をご存知でしょうか?
これは読んだとおり、薫香材料である植物を染め物に転用したもので、日本の伝統的な色の名前にも散見します。
ここでは実際にその素材を用いて染め上げられた色調と、素材名だけ引用されたものをご紹介。
目次
香染
丁子を煎じた液で染めた、赤橙色。これで染めた布や紙は、しばらく芳香を放って防虫の役割も果たした。
布だけでなく扇や料紙などにも、香色が愛用された。しかし、貴重な香料である丁子を使えたのは、一部の裕福な貴族だけである。
多くは紅花などの代用で染め上げられた物が多かった。
色調によって名称が変わるのも面白いポイント。
薄香・
香色の薄いもの。灰色がかった黄色
濃き香
濃い香色
赤香
赤みがかった香色。くすんだ黄赤
焦香 こがれこう
焦げた香色の意
丁子香
香色と同義。茶色がかった丁子色を指す。
鬱金色
鬱金の根茎で染めた鮮やかな濃い黄色。
鬱金で染められた布は香りを伴う。
その結果、防虫効果が発揮されるため、木綿に染めて子供の衣裳にしたり、古美術品や着物の外包などに用いられる。
肉桂色
肉桂の樹皮や根皮を乾燥させたもので、やや明るめの、赤みがかった茶色。
伽羅色
伽羅で染めた色。または伽羅に因んだ暗い黄褐色。伽羅茶とも。
江戸時代では伽羅という言葉は、香木を指すだけでなく、“素晴らしいもの”という意味があった。