今回は、夜に花を咲かせる中国原産の花、“イエライシャン”について解説をしていきます。
目次
イエライシャンとは?
夜来香は、ギリシア語でTele=遠いの意味と、osme=香りの意味を含み、芳香が遠くまで届くことを表しています。
学名
Tellosoma cordata Merril
英名
West Coast creeper
中国名が夜来香で、日本ではそのままヤライコウと呼ぶか、イエライシャンと呼ぶかは定まっていないです。
和名
イエライシャン
ヤライコウ
漢名
夜来香
別名トンキンカンズラという名前もあるが、実物がほとんど日本になかったため、イエライシャンという名前が流布しました。
イエライシャン
特徴と生態
科 :ガガイモ科
植生:ツル植物
原産地:インド、ベトナム
花が咲くのは8月から10月で、開花するとローズ、ヨノン系の拡散性のある芳香を発し、特に夜間に強まる。
見た目は、花の付け根から15個から20個の房状になって垂れ下がる。
花の形は星型で先が割れて筒状になり、バラの剣弁咲きのように軽く反転する。
花そのものの大きさは約2cmで、色は淡い緑色、内面は淡い黄色で花としては地味。
次に利用法について軽く触れます。
イエライシャン
どんな使われ方をしてる?
中国では栽培され、髪飾りとして楽しむ他、サラダやスープ、根は砂糖漬けにして食すことも可能。
より南方では、貴婦人の秘蔵の花で、深窓で愛でてきたと言われている。
薬効としては、発汗作用で清涼になり、眼病にも良いとされる。
次に中国で伝えられる故事についてご紹介。
戦争とイエライシャン
中国に伝えられる故事は、
「昔、中国に戦乱があり、ある軍隊が白を占拠した。だが夜になり、夜来香の香りに包まれているうちに戦意を失い、翌日の戦いでは城を追われることになった。」
とあります。
「夜のやみにあって、さらに漂い香る、荒ぶる心を鎮める不思議な香りで、戦って血を流すことが愚かしく思えたのだろう。」
と結ばれている。
続いて、イエライシャンの香りと香気成分について解説。
イエライシャン
香りと香気成分
日本で始めて開花したイエライシャンの観察は、1975年の10月で、神城植物公園で行われた。
その時の記録は以下の通り。
「部屋に入った途端に柔らかで心持ち甘く、しかし清らかな、得も言われぬ香りが漂い足が釘付けになった。よく嗅ぐと匂いはヘリオトロープか、バラのピースに近いが、そのどれにもない不思議な桂香に思われた。」
1991年9月、中国広州市郊外の夜来香栽培畑で、香りの調査が行われた。
香りは昼間の間はペパリー、ジンジャー調の弱めでソフトな香りだった。
しかし夜になると、ローズ、バイオレット調のパウダリーノートが主香調となった。
さらにリーフィーグリーン、シトラス、カンファー、沈香などが加味された、拡散性のある独特な香気だった。
全体的な印象としては、ソフトで広がりのある甘さと、新鮮な青みや柑橘系の爽やかさも感ぜられる清雅な香り。
ヘキサン抽出物から確認できた成分は以下の通り。
アルコール類
・ゲラニオール
・ネロール
・αーターピネオール
・ジヒドローβーイオノール
・ネロリドール
・リナロール
・シス-3ーヘキセノール
・トランスー2ーヘキセノール
ケトン類
・βーイオノン
・ジヒドローβーイオノン
・6-メチルー5ヘプテー2-オン
炭化水素類
・ロンギフォレン
・αーロンギフォレン
・ロンギサイクレン
・カリオフィレン
・α-&βピネン
・サビネン
・ミルセン
・1,8ーシネオール
・βーイオノン
・6ーオキサイド
・ジヒドロアクチニリッド
・ゲラニルヘプタノエイト
・ベンジルベンゾエイト
開花した香りの成分が、時間の経過でどのように変化したのか?
結論を言うと、夜明け前が一番香り、昼から夕方はあまり香らないという結果だった。