今回は果物のアケビが生薬として利用されていることについて掘り下げていきます。
目次
木通(アケビ)
基本情報
学名:Akebia quinata
目:キンポウゲ目
科:アケビ科
属:アケビ属
生薬名:木通(モクツウ)
アケビ概要
東アジアに自生する落葉性のツル植物。
アケビにもいくつか品種があり、普通のアケビ、荒れた土地でも育つミツバアケビ、アケビトミツバアケビの中間品種ゴヨウアケビなどが存在する。
中国古典におけるモクツウは地方によっていろいろな植物の基原としてとして利用されていたため、本来の基原植物はわかっていない。
アケビの特徴
葉は掌状葉で小葉を5枚つけ互生する。短い品種は叢生、長円形から長円状で卵型をし、縁がある。
4-5月頃に短い穂のような淡い紫色の花を咲かせる。ミツバアケビも同じ時期に花を咲かせるが、こちらは濃い紫色。
液果は長い楕円形で、外面は紫色。熟した果実は白い種子を多く含み、甘い。
木通(木通)解説
生薬で使われるのはアケビ Akebia quianata 又はミツバアケビ Akebia triforiataの蔓性の茎。
ほぼ味はなくややエグみがあるのが生薬としての特徴で、秋にツルを収穫して乾燥させる。
良いものは放射状の模様がはっきりしていて、切断面が灰色がかった白ないしクリーム色のもの。
主要成分及び効能
アケボシド
他には
・ヘドラゲニン
・オレアノール酸
・カリウム塩
など。
ヘデラゲニンはトリテルペン類の一種でアケボシドのアグリコン。
主な薬効
・利尿
・通経
・消炎
水性エキス
・軽い利尿作用
50%メタノールエキス及びサポニン画分
・ストレス胃潰瘍発生予防
・抗炎症
・胃液分泌抑制
漢方処方
漢方では利尿や通経に用いられる。尿路疾患とみなされる処方や消炎性利尿、通経などを目的として処方されることが多い。
含まれる漢方としては
・消風散
・通導散
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯
(トウキシギャクゴシュユショウキョウトウ)など
和名の逸話
アケビの由来は諸説あるが、一説にはアケビの果実は熟すと割れて中身が見えるようになる。その様子から『明け身』→『アケビ』となった説。
ほかにも割れた実が人のあくびの様子に似ているからとも。
木通の由来
本草綱目によると「ツルには細い穴があり、通っているので通草といい、今の木通である。」と記述が残っている。
アケビを表す漢字にはこの木通以外にも、「山女、山姫」がある。これは開いた実を女性の外陰部に例えたものだとか・・・
学名の小話
植物の和名がそのまま学名として用いられることが多数あり、アケビを筆頭に
・温州みかん
=Citrus unshiu
・ナツミカン
=Citrus natudaidai
・アンズ
=Prunus armeniaca var.ansu
学名解説
quinata
ラテン語形容詞で5つの、5葉のという意味。英語のquintumは『5番目の』という意味で、イタリアかフランスを介して英語に入りました。
アケビの葉を食草とする大型の蛾の仲間で、ムベ、アオツヅラフジなども食べる。
幼虫のときは葉を食べるが、外敵に襲われると背中を丸めて目のような丸い模様を見せて撃退しようとする。この模様を『眼状紋』という。
眼状紋とは蛇やフクロウの目に擬態する防衛機能の一種。
成虫になると枯れ葉のような色の羽になり周りに溶け込む。しかし、後ろの羽は鮮やかな黄色で、眼状紋も備えている。
成虫はぶどうやナシなどに口吻を突き立てて果汁を吸うため、果樹園の厄介者でもある。