今回はお腹の調子を整えてくれることでお馴染みのアロエ。そのアロエを生薬的な観点から解説していきます。
目次
アロエ(蘆薈)
基本情報
目:ユリ目←意外。
新エングラー体系=ユリ科:Liliaceae
クロンキスト体系=アロエ科:Aloaceae
AGP分類体系=ツルボラン科
属:アロエ科
産地
・中国
・日本(奈良、茨城)
アロエの概要
多肉植物でぱっと見サボテンの仲間に見えるが、じつはユリ科の常緑一年草で、大型の品種は6mに達する。
アロエの歴史は植物の歴史の中でもかなり古く、最古の医学書エーデルスパピルス(紀元前1500-2000年頃?)にも記載がある。
古代ギリシャ時代では、アレクサンドロス大王がアリストテレスの勧めで遠征時にアロエを持参したと言われている。
アロエ
見た目の特徴
葉は長披針形で、ロゼット状に30-50枚つく。色は青緑色で下についたものは1mに達する。
アロエベラの花は夏と秋に穂のような形で、ケープアロエは黄緑色からやや白い花と形が全く異なる。
生薬:蘆薈
アロエはエキスを乾燥させたものが生薬として利用され、
・Aloe ferox MIll
・Aloe africana
・Aloe Spicata Bakerの雑種
などの葉から得られる。
不定形の塊で、特異な匂いがする。そして極めて苦い。葉から出る液体を煮詰めて濃縮、乾燥したもの。保存の際は気密容器にて。
時に黄色い粉で覆われることがあり、破砕面は平滑でガラスに似ている。
主要成分:バルバロイン
瀉下活性の本体はバルなロインのアグリコンであるアロエモモジン(センナにも含まれるアントロンの一種)。
腸内細菌によって糖から切り離されて腸管運動を促進し活性化させる、天然のプロドラッグである。
アントラキノン誘導体
・アロエモモジン
アントロン配糖体
・バルバロイン
・イソバルバロイン
・アロイノシドA,B
主な薬効
・健胃
・緩下
・強壮
血糖降下剤や抗不整脈剤との併用は、その作用を増強するため注意が必要。
また腸壁や骨盤腔内を充血させるため、
・月経期
・妊娠中
・血便
・胃腸機能低下時
には使用は要注意。
アロエの学名について
アロエ属のAloeはギリシャ語のアロエーからラテン語に入ったもの。これは何らかのセム語由来だと言われているほか、聖書に登場するヘブライ語のアハリームも関連している。
他にもアラビア語で「苦い」を原点とするアロエの植物名に因んでいる説もある。
古来アロエはジンチョウゲ科の沈香と綴りが似ているため混同されてきた。今日では英語でeaglewood,aloeswoodと呼ばれている。
これまでの古代言語の名称が、沈香を指しているのかアロエを指しているのかはわからない。
面白いのが、言語を遡っていくとアロエー、アハーリーム、アッホーロも、遡ると沈香を意味するサンスクリット語の“Aghil”に由来しているとされる。
種小名のferoxは、ラテン語で「恐ろしい、危険な」という意味。葉の縁がギザギザでのこぎりのように鋭く、アロエの中でも大きく育つことに由来。
英語のferocious「獰猛な、凶暴な」はラテン語のferoxから派生している。
次にアロエの品種をいくつか紹介。
○キダチアロエ
Aloe arborescens
日本で多く見られる品種で、別名「医者いらず」。葉は剣状で多汁、緑がかった灰色で小さな三角形の棘を密につける。
種小名のarborescensはラテン語で「亜高木の」という意味。
○アロエ・ベラ
Aloe vera
食用アロエ。欧米でのアロエはこの品種。西インド諸島のバルバトスが有名な産地だが、原産はアフリカないしアラビア。
アロエの和名と他の品種
和名のロカイはアロエを中国語に音訳した蘆薈を、江戸時代の本草学者が「ろかい」と漢音読みしたことが始まり。